大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和39年(う)2496号 判決 1965年2月15日

主文

本件控訴を棄却する。

当審における未決勾留日数中七〇日を、原判決の本刑に算入する。

理由

本件控訴の趣意は、弁護人高橋高男の提出にかかる控訴趣意書に記載されているとおりであるから、これを引用する。(なお、弁護人は、当審公判において、被告人提出の控訴趣意書は陳述しない旨の釈明をした。)。

控訴趣意第一点について。

所論は、被告人の原判示第一の艦船侵入の所為と同第二の出入国管理令違反(不法出国)の所為とは、被告人の主観的意図のいかんにかかわらず、刑法第五四条第一項後段所定の牽連犯であるのに、これを併合罪に問擬した原判決には、法令の適用を誤つた違法があるという旨の主張である。

しかし、数罪が牽連犯となるためには、犯人が主観的にその一方を他方の手段または結果の関係において実行したというだけでは足らず、その数罪間に、その罪質上通例手段結果の関係が存在すべきものであることを必要とする。(昭和二三年(れ)第二〇六三号同二四年一二月二一日最高裁判所大法廷判決、刑集三巻一二号二〇四八頁参照)。そして、所論艦船侵入罪と出入国管理令違反の罪とは、必ずしも、その罪質上通例手段または結果の関係があるとは認めることができないものであるから、たとえ、本件において、被告人が、不法出国、すなわち、出入国管理令違反罪の実行の手段として、艦船侵入罪を犯したものであるにしても、その一事だけで、右両者の罪を牽連犯とみることはできない。したがつて、原判決には、所論のような違法はないから、論旨は理由がない。

(その余の判決理由は省略する)(小林健治 吉川由己夫 麻上正信)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例